トゥレット症候群の変異体遺伝子発見

2010年5月5日

イェール医科大学の研究チームはトゥレット症候群が頻発する家族の研究から、ヒスタミンを生産するに必要なある遺伝子の変異体を発見した。この変異体の発見はチックとトゥレット症候群治療の新しい手がかりになるかも知れない。

この研究はthe New England Journal of Medicine誌に5月5日に発表された。研究者はイェール大学子供研究センターのマシュー・ステートとドナルド・コーエン等のチームである。

トゥレット症候群は通称チックと呼ばれ比較的多く見られる神経症状で、無意識的顔面の動きや首振り、腕や肩を振り回す動きや意味のない発声等を特徴としている。発症の多くは子供で発症率は1%と言われているが、思春期にそのピークに達する。生命に関わることはないが、生活が困難になる場合もある。トゥレット症候群にかかっている人は注意欠陥多動性障害、強迫行為、鬱状態を併発していることが多い。

トゥレット症候群の発症には遺伝子が強く働いていると今まで考えれ、マシュー・ステート等も原因遺伝子を求めて10年以上研究して来た。「病気の原因遺伝子研究にはその病気を多く発症する家族を調査するが、今回も同じアプローチで研究した」とメンバーであるアダイフ・グルハンは言う。

マシュー・ステート等は、1-ヒスチジンデカルボキシラーゼ(1-histidine de carboxylase =HDC)と呼ばれる遺伝子の変異体をある家族に発見した。この遺伝子はヒスタミンの生産に必要な蛋白質を作る。ヒスタミンはアレルギー反応で知られているが、同時に重要な神経伝達物質でもあり、脳のあらゆる機能に関わっている。

この家族では、父とその子供8人全員がトゥレット症候群と診断されている。母親とその系統の家族にはトゥレット症候群は出ていない。父と子供の内の2人は強迫行為でもある。ステート等はその家族全員からDNAを抽出して、ゲノムの中のある部分に発症家族に共通する1-ヒスチジンデカルボキシラーゼの変異体を発見した。この変異体が機能不全の蛋白質を生産していた。

今までの研究から、ヒスタミンを不足したねずみは人のチックに似た症状(繰り返し動作)を示す事が分かっており、ヒスタミンのレベルを上げるとその異常行動が止むとステートは言う。

「神経精神病の研究で、病気の原因となる遺伝子変異体発見からいきなり新しい治療に移るのは大変珍しい。今までに十分研究された分野での特定遺伝子発見だったから大変幸運である。脳内のヒスタミン分泌を促進する医薬は開発途上にある。今回の発見がトゥレット症候群の治療新薬の開発へつながることを期待する」とステートは言う。



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