2023年5月8日 |
アメリカでは食事に含まれるカロリーの60%は高度に加工された食品から取ると言われている。以前からプラスティック袋に入ったシリアル、スナック菓子、冷凍食品等は糖尿病、肥満、癌の元と言われて来た。最近の研究によると、高度加工食品は鬱や不安の原因ばかりでなく認識力の低下まで起こすとしている。では加工食品の何が悪くてどう防ぐことが出来るだろうか。 高度加工食品の定義 2009年にブラジルの研究者が加工度合いに応じて食品を4つに分けた。最初の二つはほとんど加工していないか少し加工した食品で果実、野菜、コメ、小麦粉等。次は普通加工した油、バター、砂糖、酪農商品、缶詰、燻製肉魚等で、4つ目は果糖入りコーンシロップ、水素化油、分離たんぱく質、着色料、人工調味料、甘味料、乳化剤、防腐剤等の超加工した食品である。 簡単に言えば、超加工食品とはスーパーに売られている袋詰め商品であり、マクドナルドのお店のメニューだ。問題はこれらの食品が健康食品を浸食して影響が出始めたことである。 「超加工食品は誰にとってもおいしい。故に人々は次第に自然食品から超加工食品に嗜好を変えている」とフロリダ・アトランティック大学のエリック・ヘクトは言う。 超加工食品と心の病気の問題 最近では超加工食品が鬱を引き起こしているのではないかと言われている。2022年に行われた1万人の調査でも超加工食品と鬱、不安の関係を指摘していた。 「60%以上のカロリーを超加工食品から取る人は、心の不調を抱えていて認知力も低下していた」とエリック・ヘクトは言う。 2022年ブラジルでに行われた11,000人を対象とした調査では、超加工食品を多量に摂取する人に認知力、記憶力、判断力、解決能力の低下が見られた。 「認知力の低下は年齢と共に起きるが、超加工食品を多く食べる人では更に28%低下していた」とサンパウロ大学のナタリア・ゴメスは言う。 もっとも、健康な食品を食べることにより超加工食品に起因する健康問題を相殺することもできる。ブラジルの研究では、全粒穀物、緑色野菜、豆、ナッツ、ベリー、魚、鶏肉、オリーブオイル等を食べると認知症発症リスクを大幅に下げていた。しかし認知症を防ぐためには超加工食品の量をを何処まで下げるべきかは分からないと言う。 超加工食品が何故認知症を起こすのか。 「自然食品に抗鬱効果があるのは確かだが、超加工食品が鬱を起こす理由は分からない」とオーストラリア・ディーキン大学のメリッサ・レーンは言う。 研究者が注目しているのは、腸の健康と脳の関係だ。超加工食品には繊維が少ないが、全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、種等には繊維が多く含まれる。腸ではこの繊維が豊富な細菌の生育に欠かせない。また短鎖脂肪酸が健康な脳の活動に重要な役割をすると言われるが、その生産にも豊富な繊維と細菌を必要とする。 「人が鬱状態だったり不安だったりすると、腸内では細菌の種類が少なく、短鎖脂肪酸の生産量も落ちる」とディーキン大学のウォルフガング・マルクスは言う。 超加工食品に含まれる添加物も腸内細菌に影響する。 「果糖、人工甘味料(サッカリン)乳化剤(カルボキシメチルセルローズ)等は腸内細菌に良からぬ影響を与える」とマルクスは言う。 「腸内細菌の多様性の欠如、砂糖の大量摂取は慢性炎症の元になり、慢性炎症は心体に影響を与えて脳では鬱を引き起こす」とレーンは言う。 加工食品と心の健康は双方向 「食事の質は心に影響するが、人の心も食事に影響する。人は過剰のストレスの元では加工食品に手を出しやすい」とハーバード公衆衛生大学院のフランク・フーは言う。 超加工食品の判定法 分かりやすい判定法は食品のラベルを読む事。 「添加物を見て、余り聞いたことがない名前を見たら注意だ」とセントルイス大学のウィットニー・リンゼンメイヤーは言う。難しい化学物質名があったらその食品は超加工食品と言ってもよい。 「超加工食品を使わなくても簡単に食事を用意出来る。豆缶詰、冷凍野菜、インスタント玄米、魚の缶詰等は健康食品です。料理に使うハーブ、スパイス、食塩、油等は必ずしも健康に悪くない」とリンゼンメイヤーは言う。 脳科学ニュース・インデックスへ |