内気、内向性

2019年6月5日


パーティーで人と歓談することを考えただけでも不安になって来たり、聴衆の前でスピーチをすると思うだけで不安が高まって来たとしても、それほど心配する必要はない。誰でも感じる事で、生活に障害になるものではないが、一部の人は対人恐怖に発展する。

ここにアキンデレ・マイケルと言うナイジェリアで生まれの人がいて、彼は子供の頃、家の中で遊ぶことが多く、それで内気になったと説明しているが本当だろうか。

「ある程度そうでしょう。内気は性格とも言うが、性格は子供の頃の生活環境でも作られる」とロンドン、キングスカレッジのタリア・イーレイは言う。彼女によると、内気は30%が遺伝子で、その他は環境によるものと言う。

内気と遺伝の関係を調べる時、専門家は一卵性双生児で調べる。一卵性双生児では二人が全く同じ遺伝子を持つから、内気が遺伝子によるものかそうでないか調べやすい。最近の個性を決定する遺伝子調査では、変異体にまで及んでいる。
人を内気にさせるのは、数千の遺伝子の共同作業と考えられているから、内気遺伝子を同定するのは容易でない。

遺伝子を研究すると、遺伝子と環境の相互作用に注目するようになる。恐らく環境は遺伝子より強く働くのだろう。例えば、内気な子供は皆の中に入らないで一人を好むが、一人を好む生活をしているから余計に内気になるとも考えらえる。
「遺伝子か環境かではなくて、両方という事です。だから乗り越えられる可能性がある分けです」とイーレイは言う。

「内気はそれ自体は異常ではないが、対人恐怖になると話は違う。対人恐怖では、仕事場で人に話が出来ないとか、社交が全然ダメになるとか、自分が人にどう評価されているか非常に気になるとかで、生活が困難になる」とロンドンの神経症センターのクロー・フォスターは言う。

内気は進化により獲得されたものとイーレイは言う。
「社会には外向的な人も必要だが、同時に内に籠って危険を避け、家族を助ける内向的な人も必要だ」と彼女は言う。

カリフォルニア大学デービス校のジェーシー・サンは、内気と内向は意味が違うと言う。心理学者に言わせると、内向と外向の違いは外側に積極的に働きかけるかどうかの違いと見る。内気は内向的ではあるが、社交性が要求される局面では外向的に振る舞う事も出来る。内向的で内気ではないタイプは、社交場面で苦痛に感じないが、気の合うグループと一緒にいたがる。

「内向、外向は幸せ感と密接に結びついている。外向的性格はより物事に感激して積極的に楽しむが、内向的な人は、それを押し殺しているように見える」とサンは言う。では、内向的な人が意図的に外向的に振る舞って、積極的に楽しめるようになるだろうか。

サンは人を集めて面白い実験をした。人に敢えて外向的に一週間振る舞ってもらうのだ。これは内向性の人には大変な実験だ。結果は、外向的な人には楽しい一週間であったが、内向的な人には不自然な一週間で、特に強い内向性の人には苦痛以外の何物でもなかった。

「内向的な人に外向的に振る舞うのは、荷が重いのだろう。でも内向的な人も良い経験になったかも知れない」とサンは語る。

ここで内向、外向と民族、文化の関連を見るのも面白い。一体、内向的な人に幸せな国はあるのだろうか。
アメリカでは自分をはっきり主張する事が要求されて、外向的人間が歓迎されるが、アジアでは、例えば日本とか中国では控えめな人物が評価される。
西側社会では信頼感を得るには視線を合わせる事が重要であるが、アジアとかアフリカでは視線の一致は挑戦的に感じられると、ボール州立大学のクリス・ラグサケンは言う。このような文化の違いがあってもなお外向的な人は幸せであるが、その度合いがアジアでは多少減る傾向があるとサンは述べる。

以上で、世界何処に行っても外向的な人がより幸せなのは分かったが、でも内向的な人がダメかと言うとそんな事は全くない。
「よくしゃべる者が必ずしも正しい事を言っている分けではないのだから、内向性を治すなんて考えてはならない」と、”内向の力”と言う本を書いたスーザン・ケインは言う。



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