極微と極大の世界は似ていること


私はテレビで英語のドキュメンタリーチャンネルを見ることが多く、そこのプログラムでは何時も宇宙を放送しています。宇宙と言う無限の世界は、極微の世界である分子、原子、素粒子の世界に実によく似ていると思う。
素粒子の世界では量子力学が粒子の動きを説明するのに対して、巨大な宇宙ではアインシュタインの相対性理論が主役になる。現在、宇宙の膨張が確認されていて、しかもそれが加速されている。宇宙の膨張が加速するのは、われわれには見えないエネルギーが宇宙にあるに違いないとして科学者が今これを追っています。このエネルギーをダークエネルギーと呼ぶ。
宇宙の誕生を研究しようとすると、どうしても量子力学と相対性理論を統合する理論が必要になります。その案として現在「ひも理論」と言うのが提案されていますが、こうなるとわれわれにはなんだかさっぱり分からなくなる。

ところで、なぜ神経症のページで極微と極大の近似性を説くかと言うと、神経症者は極大は見ていますが極微を見ていないからです。
彼らは人生の先行き、仕事の話、進学、結婚ともっともらしい話をするが、その割には彼らの生活は思わしくない。収入は社会一般レベルより大きく落ち込み、一部の神経症者は生活保護を申請してもおかしくない状態なのです。彼らの生活をおかしくしているのが、極大があって極微が存在しない彼らの視野なのだ。簡単に言うと将来ばかり考えて、現在がまったく停止している。

彼らは人生論議には興じるが、今の瞬間の物事に反応しない。健康な人は遠くをにらんではいるが、この瞬間の大切さを皮膚で感じているから、動きが止まることがない。彼らは何時もニコニコしながら、そつなく雑務を処理する。別に雑務が価値あるからやっているわけではなく、ただやっているだけだ。

この自然な動きを命令している脳が前頭葉ではなく、その後に位置する脳なのです。脳の進化は素晴らしいもので、人間を含めてこの世の動物の総てが無意識と言う省エネプログラムを頻繁に使って生きている。

無意識の凄さを示す例として、ゴルフでホールインワンを考えると、ゴール直前の1振りを想定しているのですが、この命令を発しているのは前頭葉ではなくてその後ろに控える脳なのです。練習で鍛えられた人ではここから正確な命令が出されているから確実に穴に入れる。しかし、そこに前頭葉がわり込むと命令系統に異変が生じて、ボールは穴をはずして失敗となる。これは皆さんも経験していることで、変に意識するとものごとは失敗する。

健康な人たちは半分無意識でものごとを処理しているのです。神経症者と言うのは些細な目の前の物事が処理できないで、遠い将来ばかりを考えている。彼らは考えまくっているから動くのがうっとうしく動かない。顔を見ると青く、目はどんよりしていて、明らかに精神症状を呈している。こうなると仕事に行くのは既に困難になっていて、家族にも無理難題を吹っかけ、奇妙な行動に出たりして大変な負担になっている。ある時は断食道場が神経症を治すと信じて飛び込み、ある時はどこそこの山中で引きこもりの人達を集めて指導していると聞きつけて参加しと、30年以上無駄を繰り返している人がざらにいる。

インターネットがない頃の1995年以前では、神経症者は僅かな知識のよりどころを森田療法にもとめいたから、神経症が精神病の一種であるのが分からなかった。今はコンピューターが手元にあり、アメリカから最新の脳の科学の情報が瞬時に入ってくる時代で、迷信、似非科学を信じる意味がない。

神経症は重大な精神障害なのです。
だから強迫観念の言うがままに努力をしていると、貴方の生活は崩壊してしまう。健康に戻る原点は、まず自分が狂いの世界にいると自覚することです。
そのためには直ぐ立ち上がって自分の身の周りにある雑務の処理を開始せねばならない。「雑用の意味が分かるまでは、あるいは、斎藤療法と森田療法の違いが分かるまでは雑用をしない」と言い張ると、貴方の一生はむだに終わる。



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