果てしない質疑応答

私は時々書くものがなると、森田療法関連のインターネットサイトを訪問して神経症者の問題点を探ります。そこで発見するのは、訪問者が質問をしてサイト運営者あるいは掲示板参加者が答える形を取っているのですが、内容は果てしもない質疑応答で胸がいっぱいになり直ぐ退散します。

訪問者の質問は健康な人から見ると意味不明で、それに対して解答する人も意味不明で答える。運営者は神経症を解決している風を装っていますが、実は質問をする訪問者と同じく深刻な神経症で苦しんでいるのが私には見て取れます。これでは時間の無駄で、彼らのほとんどが空論を繰り返しつつ人生を終えてしまうでしょう。終えるどころか次第に追い込まれ、ある時点から錯乱状態になってしまうかも知れない。

神経症とは深刻な心の病気なのです。
神経症では健康な脳には起きてない重度の葛藤が止まらない状態になっています。健康な脳にはこのような暴走が起きないように安全ロックがかかっていますが、神経症ではロックが不完全で、ちょっとした刺激で脳は暴走を開始します。ロックが外れた脳は脳の持つ資源を燃やし尽くすから、生活は非常に困難になり人は追い込まれます。私の知っている範囲でも、精神病院に入院した人たちを知っているし、私自身も48歳の時点でほとんど廃人でした。

最近は、科学の進歩で今まで相手にもされなかった理解不可能な心の病がインターネット上で散見されるようになりました。今までは脳科学が存在しなかったから社会は無視した分けですが、インターネットの普及と脳科学の向上で、心の病として認定されるようになったのは進歩です。
神経症もその一つで、今までは単に心配性、真面目な人で片付けられていましたが、脳の異変であると社会はみるようになったわけです。

ただ、神経症が病気と分かっても今のところ治療法はないし、薬もありません。現状は抗鬱剤を処方してもらうか、100年前の森田療法を読むかになってしまい後は放置されている。
それならどうしたらよいだろうか。私は自身の経験から、神経症の解決は脳の暴走を止めることだと学びました。暴走さえ止まれば、後は症状も鬱も雲散霧消するのです。

脳の暴走は薬でも心理分析でも止まりません。薬とは皆さん経験したように、数時間、不安のレベルを下げるだけで、直ぐ元に戻ってしまいます。都合が悪いことに不安が元に戻ると以前より不安が悪化してしまうことです。

不安の分析は尤もらしいですが、とても科学とは言えないでしょう。どうにでも説明が出来るわけで、一種の作文です。
不安の分析をやってはいけないもう一つの理由は、分析をする脳、解釈をする脳が病んでいるからです。脳以外の部位が病んでいたり傷ついていたりした場合は、その原因を知り処置を学ぶ事は重要ですが、病んでいる部位が脳である場合は話が違う。病んだ脳は必ず間違った判断をして、分析後は決まって不安は悪化し、最後は手の施しようがなくなるからです。

ではやりようがないのかと言うとそうではなく、私は無為療法で神経症脳の暴走を停止させた。どうやってこの困難な脳の暴走を停止させることが出来るか。私の場合は、30年間読み続けた森田療法をもう読まないと決心した。
森田療法を読んでない人はどうするか。治療努力をすることが神経症の原因であり結果であると、深く理解することがまず第一です。次は実行ですがこれが極めて難しい。

一発で成功すれば理想ですが多くは何回も失敗します。
何故繰り返し失敗するのか。われわれの脳は元々危ない脳だからです。神経症脳とはブレーキが壊れている脳で、暴走を止めようとしても止まらないし、止まっても、うっかりするとまた動き始めてしまう欠陥脳です。でも動き始めるとにわかに不安レベルが上がるので、正常でないと気が付くでしょう。気が付いたらまた停止を試みるのです。

治療努力の停止を何べんかすると、その効果が素晴らしいのに気付くはずです。今までとは別次元に自分が入っているのが分かります。そこは困難を克服した場所ではなく、克服の言葉が消滅した場所になっています。また神経症に勝利したとも思わない。克服も勝利もないのに、今までと違って心が軽く体も軽い。日常の何かを処理していてそれがとまらないのです。

これが神経症の解決した世界と言うと、神経症者は嘘でしょうと言うに違いない。神経症者の理想郷とは、今自分をがんじがらめに苦しめている不安が、きれいさっぱり消えている世界です。単に時間が流れているだけでどうして理想の実現と言えるかと。

神経症の不安とは、神経症脳が作り出した虚構の不安だったのです。虚構の不安はそれが消えてもその痕跡は残さない。ただ切迫感がなくなり時間の進みが早く感じるだけです。

まあ、こんなものかなと思いながら日々を過ごし始めるとある時点で、ああ自分は神経症から解放されたのだなあと実感する時があります。それこそが本物で、そこまで到達するのに1年以上かかるかも知れない。

こうして健康生活を1年1年と伸ばしていくのが真の神経症治療です。しょせん生物学的欠陥のある脳に生まれたのだから、きれいさっぱり一瞬にして問題が消え去るなんて、虫が良すぎるのです。



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