一晩で治ること


神経症者には我慢して頑張っていれば何時か治ると考える人が多いが、これは間違いです。神経症の治りは一瞬であり、効果は今すぐ現れる。神経症の治りとは、治るか治らないかの二者択一であるから、治るとすれば今すぐなのです。私は神経症が治る時間は一秒の百分の一であると表現する。それは物理学の量子力学に似ていて、ニュートン力学のように時間をかけて変化しない。

何故これほど変化が激しいか。理由は、脳は電子で作動するスーパーコンピューターだからです。それに対して、臓器が回復する時は組織の細胞レベルの回復で、アナログ的であり、時間をかけながらゆっくり回復する。

神経症が治るとは神経回路が修正されることであり、電子の流れが変わる。電子の流れが変われば脳の動作も瞬時に変化する。症状も不安もあっという間に消え去ってしまう。だから、もし貴方が無為療法をしながら治しに数か月かかったとしたら、既にそれは無為療法ではなく、恐らくそのまま神経症が続くであろう。

何故瞬間に回路が修正されるか。
貴方は神経症になって以来、一日も欠かさず神経症の治りを考え続けて来たはずだ。努力は凄まじく、脳は誤った回路を使いながらオーバーヒートをしている状態になっていた。今ままでこの回路の停止なんて考えたこともなかっただろう。しかし、ある日に、「もう治す努力は止めた」と宣言して間違い回路を遮断すると、脳に革命が起きる。

恐らく、神経症者の他の脳は正常な仕事をしたいと待ち構えていたが、間違った回路が邪魔して妨害していたのです。そこに突然、問題の回路が作動を停止すると、待ちに待った正常脳が押し寄せて来て、わっと通常の作業を始める。脳の各部分が正常につながり、情報が迅速に処理される。今までは脳の力学に歪みが生じていたから鬱状態が発生していた。その歪みがなくなると鬱状態が解消されて、不安も消える。

体も軽くなったはずだ。今までなら動くにも一々考えないと動けなかったのが、考える前に既に立ち上がっている。強迫観念が思考を妨害しないから、仕事の処理も早くなる。自分の頭は悪くなかったとほっとするだろう。
朝から晩まで不安と恐怖でおどおどしていたが、もうそれがない。そう言えば、フラッシュバックもないではないか。フラッシュバックとは一時的神経症に戻る現象であり、これが10分置きにあったはずである。
神経症の治りとは、このような出来事が同時に起きる現象なのです。不思議なのはこれほど劇的変化があっても、決して飛び上がるような喜びがない。

何故飛び上って喜ばないか。
飛び上がって喜ぶとは神経症脳の反応であって、健康脳では飛び上がらない。健康脳では注意が何か別の方向に向いている。

当たり前の姿に戻ったのであり、敢えて言えば時間の経過が早い事、体が軽い事、不安が取れている事である。夢にまで思った神経症回復が、こんな当たり前の事だったのかとあっけにとられるが、雑用に追われてそれさえも忘れているのが普通の人の生活なのです。



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