神経症脳の興奮を抑える


神経症を治す上でもっとも大事なのは、神経症脳の興奮を抑える事だと思う。神経症脳の興奮状態とは、ひっきりなしに神経症を治す方法が脳に浮かぶ状態で、浮かべば試し、浮かべば試しを繰り返し、この脳の空転状態をそのまま放置すると最後は精神病院に駆け込むと言う事になります。

何としてもこれを避けないとならないですが、それにはわれわれの脳にも健康を取り戻す力があるのを忘れない事です。神経症者の誰でも健康な時代があったわけで、オギャアと生まれてすぐ神経症になる人はいない。私だって16歳までは健康で活発な少年でした。日本人の99%は神経症とは何であるかさえ分からないのです。そんな普通にはない苦しみが一体何処から来るのだろうか。それは脳の構造から起きているだろうことと、もう一つは神経症者自らが悪化させていることです。

神経症者自らが悪化させているのは、以前厳格な森田療法を実施していたある病院の様子を見れば分かります。ここでは神経症者に40日間で神経症軽快あるいは全治を約束していた。夢みたいな話で、そんな事を言われたら飛びつかない神経症者はいない分けで、多くの入院患者は夢実現に向けて必死になって院内を走り回った。

確かに必死に動けば短時間だけ神経症を忘れることがありますが、それは忘れただけで間もなく強迫観念は後ろから追いつきます。残念ながら彼らの努力にも関わらず、ほとんどの人が神経症治療に失敗したと結論するのは、退院した人でその後インターネット上で活躍している人はいないからです。神経症が治るとは人生最大の夢の実現ですからこれはおかしい。

何が間違っていたのであろうか。
医療では治療目的の昏睡導入と言う言葉があります。昏睡状態の方が患者の回復が早いと医師が判断した時に実施する措置です。神経症も同じで、今、不安で興奮状態になっている患者には何をおいても神経症脳を冷やすのが肝心で、そんな時にここに全治根治があると煽ってはいけないのです。

私は48歳の時にもう何があろうとも絶対森田療法の本は読まないと決意して、薬を使わずに神経症脳昏睡を実行しました。するとあれほど頻繁に頭に去来していたこうすれば神経症が治るのヒントが消えたのです。ヒントが消えると、注意は自然と目の前の雑務の処理に向かい、当然生活は正常に戻ります。同時にあれほど悩ませていた不安、恐怖がいつの間にか消えていました。

無為療法とは麻酔薬を使わずに神経症脳の興奮を冷ます療法だったのです。自分の意思で強迫観念との対話を断ち切ると、神経症脳の興奮レベルがぐっと下がり、ぐっすりよく寝た朝の目覚めに近い感覚を経験をします。疲れが消えているだけで、完治根治などの語彙は頭のどこにもない。

健康とは恐怖、不安を克服した状態ではなく、それが強迫観念に成長することはなく、自然に消える状態だったのです。そんな時、人は困難を克服したと言うだろうか。心理的負荷のない自然な状態で、これを真の神経症の治りと言ってよいでしょう。



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