行為が症状を強化する


最近アメリカ国立精神衛生研究所の摂食障害研究の報告を読んでいて成る程と思ったのですが、実は摂食障害では、彼女達の異常な食事行為そのものが病的食事癖強化になっていると言う。即ち、彼女達の努力が脳の回路を変化させ、これが摂食障害の慢性化、悪化の原因になっていると説明している。

私には神経症にも同じメカニズムが働いているように思える。
もし神経症克服の訓練が有効なら、森田以来100年経ち、神経症を治した人が沢山いてもおかしくないが、実は治った人を見たことがない。

どうも克服する努力が、実は神経症症状を強化して悪循環を自ら作り出しているのではないか。何故なら、私、克服努力をやめて33年経つが、あれほど苦しめた対人恐怖、異性恐怖がきれいさっぱりと消えている。
特に対人恐怖、異性恐怖の恐怖の強さは、まさしく脳内異常回路が作り上げた化け物と言いたい。あの度を越した恐怖、不安が通常の生活を不可能にしていた。

悪化させる最悪の誘いは、森田療法の完治根治だと思う。この誘いに引かれて人生を台無しにした人は数えきれないほどいるのではないか。丁度なけなしのお金をつぎ込んで生活をダメにしてしまうパチンコ狂に似て、完治根治を目指しつつ次第に生活が追い詰められ、激しい鬱に恒常的襲われるようになり、最後は錯乱か精神病院へと言う事になってしまう。

この悲劇を避ける唯一の方法は、無条件で神経症克服の戦いを停止するのです。この時に具体的にどうしたらいいかと聞いてはならない。その質問こそが狂っている脳から出てきていて、その脳は答えを聞くと質問を連発するようになる。神経症とは精神的危険な状態であるから、緊急を要し、今すぐエンジンを切れと言うことなのです。

これは神経症者には大変難しい。神経症を治せの命令は、病んでいる脳が繰り出す強迫観念だからです。でも日本人の99%は神経症克服の戦いの意味すら知らない。現に斎藤はもう戦いを停止して25年になる。



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