無為療法 禅の講義


鈴木大拙「禅仏教入門」から
釈尊は生まれるや否や、片手で天井を指し、今一つの手は地を指して「天上天下、唯我独尊」と叫んだとされている。この点に関して雲門宗の開祖雲門文えんは言う。
「釈尊がかく言ったとき、もし自分がそこに居合わせたら、自分は一撃のもとに彼を殺し、その死体を飢えたる犬の顎へ捩じ込んでやったろうに」と激しく一人の精神的指導者をののしっている。
「天上天下、唯我独尊」なんて尤もらしく聞こえるが、禅を極めた人、神経症を治した人はこのような表現を嫌う。何故なら空を切っていて中身が伴わないからだ。

禅では「一撃のもとに彼を殺し」と激しく表現するが、無為療法では「天井を見ていないで直ぐ雑用をしろ」と言う。言葉を弄りまわす姿が神経症でありその先には神経症の治りが見えない。

しかし、殆どの神経症者は今日も動きを拒否し説明を求めている。この人達を健康な世界に呼び戻すのは容易ではない。



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